第30章 お茶会
帰る前に1杯だけコーヒー飲んで行こ。
「よっこいしょ」という掛け声とともに椅子から立ち上がった。
そうして同じ階の給湯室へ行き、お湯を沸かす。
その間、私はぼーっと壁を見つめていた。
「……って!?私、耳たぶ触ってる!?」
まじで癖じゃん。なんか恥ずい。
……そういえば警察学校時代、夜更かしした翌日は必ずあいつらに怒られてたな。
当時はなぜ夜更かしがあいつらに筒抜けだったのか不思議でしょうがなかった。
だが聞いたところで『のこたァお見通しなんだよ』としか言われず、時には真剣に覗きを疑っていたこともあったな。
ま、部屋どころか棟も違うからそんなの無理なんだけど。
でも今になってやっとその理由が分かった。
みんな揃って私のこの癖知ってたんだ!だからあんなに鋭かったんじゃん!
もう、みんな揃って黙ってないで言って欲しかったな!!
そういえば、父さんはこの癖知ってるのかな?…いや、知らないだろうな。
青柳は…どうなんだろ?
まじで今まで指摘されたこと無かったから、もしかしたら本当にあいつら5人しか知らないのかもしれない。
……それはそれでありかも。
そんなことを考えて、お湯を注いで出来たインスタントコーヒーを1口啜った。
『ほっとくとすぐ無理するんだから!自分を大事にね!』
『体調管理も、立派な警察官の仕事だぞ』
『寝不足はお肌の敵よ?体あっためていっぱい寝てちょーだい』
『風呂入って飯食ってしっかり寝ろ!あと、寝る前までコーヒー飲むんじゃねぇぞ』
そんな声が聞こえた気がした。
「……分かってるって」
何も無い空間にそう呟いて、空になったプラチックカップをゴミ箱へと捨てる。
ーー……その時、携帯がブーと鳴った。