第4章 青い夏
蝉の鳴き声がこの警察学校にも響き渡り、夏の訪れを感じる今日この頃
休む暇もなく過ぎる日々の中、8月にある唯一の長期休暇が間近に迫っていた
長期と言っても、お盆の間の1週間程度ではあるが
私たちにとっては砂漠で見つけたオアシスのような、吹雪が襲う遭難中で見つけた山小屋のような
とにかく命を救われるほどにありがたい存在なのである
この期間は実家へ帰省するのがセオリー
せっかくの夏だから色々な場所へ出掛けたいところではあるが、この3ヶ月半、厳しいルールや指導により疲労が限界な者がほとんど。
ゆっくりと休んで溜まった疲労と教官の怒号から開放されたいのだ
それに加え、外部で問題を起こした者は即刻クビ。
こんな危ない橋を渡るようなことはしないのが懸命なのである。
「休暇中、みんなで海でも行かね?」
言った側から居ましたここに。
馬鹿と体力おばけと怖いもの知らずの三拍子を揃えたゴリラが
「お〜陣平ちゃんにしてはナイスな提案!」
「確かに、みんなでどこか出掛けたことないもんね!」
「僕は断然山派だ。夏の登山やハイキングは格別だぞ」
「山って虫だらけじゃない?俺虫NGなんだよね〜」
それも一頭どころでは無く四頭も
常識人だと思っていたヒロも割とゴリラであることを、私は最近つくづく感じている。
「もちろん、も行くよな?」
「ごめんパス。私は実家に帰らないと。
お母さんが亡くなって初めてのお盆だから色々やることがあるんだよね。
あ〜残念」
「お前、思ってねえだろ」
生憎私はただのか弱い人間なもんで
1週間たっぷりと休暇を満喫させてもらうよ
「連れねーな。班長は?」
「ん?俺は実家と彼女の家に行くから空いてる日はないぞ」
…ん?今、なんて?
「か、彼女っ?!!!」