第29章 桜と追憶
「あー、転んだあの人を助け起こした時に掏られたのね。どんまい」
「うぅ……」
ジョディは3枚の黒い五円玉を内ポケットから取り出して項垂れた。
FBIの財布をもやって退けるとは、やはり黒兵衛は相当な手練だったということか。
「しかしなぁ、掏った本人が死んでしまったんじゃスリの被害者を見つけようにも、どうやって探し出せば……」
「あぁ、それなら多分もうすぐ…」
そう言って、コナンくんはバッジの様なものを使って他の子供たちと連絡を取り始めた。
え、何そのトランシーバー機能付きのバッジ。
最近の子供はそんな物まで持っているのか。
随分ハイテクなんだな。
『コナンくん!見つけましたよ!
場所は、おみくじを結ぶところの横に置いてあったゴミ箱です!』
『俺も見つけたぞォ!
水飲んだ所のそばのゴミ箱の中でよ!』
『あぁ!あったみたいだよ!
鈴を鳴らす場所のゴミ箱の中に!今、神主さんに取ってもらってるとこ!』
『こっちは、現場のトイレの先のゴミ箱の中。
回収されそうだったゴミを、無理言って探させてもらったわ』
「よーし、じゃあ見つけた財布に指紋付けねぇように持ってきてくれ」
『『『おーーう!!』』』『了解』
あの子達、なんか見ないなと思ってたら財布の捜索をしていたのね。
スリは掏った財布をお金だけ抜いて捨てるから、その財布の中身を調べれば財布の持ち主が分かるかもしれない。
そこらの警察官よりいい動きしてくれるじゃない、少年探偵団。
恐らく、指示を出したのはコナンくんだろう。
さすがだな。
そして、子供たちがゴミ箱から見つけてくれた財布は全部で4つだった。
青い色の財布、茶色い長財布、赤の派手ながま口の財布、黒いシンプルな2つ折の財布である。
「あぁ!その青い財布、私のよ!」
ジョディが指を指して叫んだ。
「じゃあ、ジョディ捜査官も容疑者の1人か」
「はぁ!?」
「ちょ、目暮警部!ジョディはずっと私と一緒にいましたよ!」
「そ、そうかね。それは失敬」