第23章 中継
「もしかして…美和子の両親に挨拶に行くとか!
『娘さんを下さい!』って」
「あのねぇ、それならなんで私に内緒にしなきゃいけないのよ?
それに母は東京に住んでるから、1泊する必要も無いし」
「で、ですよね……」
「その『ある人』って、目暮警部なら聞いてるんじゃない?」
「それが、まじで言ってないらしいんですよ。
帰ってきて気持ちが落ち着いたら話しますって」
「これは怪しい」
「でしょでしょ?」
「でも、色恋沙汰じゃないんじゃない?
はっきりデートじゃないって言ってたわけだし」
あの高木くんにそんな度胸があるとは思えないし。
「はぁ、あいつ覚えてんのかな…伊達さんの命日。
一緒に墓参りに行きましょうとか言ってたくせに…」
そっか、もうすぐで1年か…。
高木くんの教育係だった刑事で、私の大切な同期。
殺しても死なないようなタフガイだったのに、交通事故で呆気なくいなくなってしまうなんて…。
___私が人生で1番すさんでいた3年前のあの時期。
例の1週間の休暇中、ゼロが来た数日後に伊達が私の元へ尋ねてきた。
「よっ!突然だが、今から出掛けるぞ!!」
そう言って、無理やり連れ出された先は近所の公園。
緑が囲むベンチに、私たちは並んで座っていた。
「……もういいよ、伊達。ほっといて。
枯れた涙はもう出てこないし、痛みももう感じない。
私は、この世界で息をする理由も見失ったの」
俯いてそう話す私を、静かに眺める伊達。
「……みんな、みんな私の前から居なくなった。
私が、私のせいで、みんな……」
「死んだ奴らをどう生かすかは、生きてる俺ら次第だ」
「……え?」
顔を上げて見た伊達の目は、力強い光を宿していた。
「お前のせいだなんて、あいつらが言うと思うか?
そうだとしたら、お前はあいつらを分かって無さすぎる。
あいつらは、の事を本当に大切に思ってたんだ。
そして、誰よりもが笑う姿が好きだった。
もちろん俺もだ」
そう言って、伊達はその大きな手を私の頭にのっけた。