第3章 ちゃんと見て
怒涛の体育祭を終えた今、私たちに襲いかかっているのは
学生たちの最大の敵、テストである
半年間しかない警察学校での学校生活の中でも、大きな試験が2回ある。そのうちの一つが6月に行われる中間試験だ。
一般的な学生が受けるテストと内容は異なり、主な科目は「憲法」「警察行政法」「刑法」「刑事訴訟法」の4つである。
ほとんど全てが暗記する内容となっており、法律や条例などは一語一句間違えずに覚えなければいけない。
膨大な量の知識を頭に詰め込もうと、みんな躍起になって試験勉強に励んでいるのだ。
もちろん私たちも例外ではない。
「んでこの現行犯逮捕の要件ってなんだよ」
「だーかーらー、犯罪の現行性・犯罪と犯人の明白性・時間的密着性の3つだって。さっきも同じこと言った」
松田たっての願いで萩と3人で勉強会を開いているのだが、一向に捗る気がしない。
ちなみに他の3人は私語厳禁の自習室に入り浸っている。
萩は萩で松田のことなんてお構いなしに自分の勉強をし続けている。
さてはあいつら、馬鹿を私に押し付けたな
くそ
「ちゃんって意外と頭いいよね」
「意外って何よ」
萩が手を止めて徐に話し始めたかと思えば、えらい失礼なことを。
以前にも話したが、これでも記憶力には自信がある。
暗記ものばかりのテストは私の十八番なのだ。
「これでも中高は成績良くて、大学でも常に上位だったんだから!国数理社何でもござれ!」
「英語は?」
「えっ、英語は…ちょっと……はは」
「え、、英語苦手なのかよ」
「要領いいから勉強すれば出来そうなのに」
「そういう問題じゃないの。
私、英語大っ嫌いなの!うち親が2人とも国際公務員なんだけどさ、おかげで小さい頃から英語英語ってうるさくて、もううんざり
だから、将来は絶対英語に関わる仕事はしないって決めてたの!」
「それでなんでポリ公になんだよ」
「え?だって1番英語使わなそうじゃない?それに寮あるし」
「…もしかして、ちゃんって意外と馬鹿…?」
「はぁ?!!」