第19章 部下との再会
今から2年前、諸々の引き継ぎも終え、組織犯罪対策部もある程度落ち着いてきた頃、新しく人が配属されることになった。
再編したばかりの関係で、異動してからまだ1年の私も教育係として後輩につくことになっている。ま、刑事の時も1年目で佐藤の教育係だったし、何とかなるだろ。
「初めまして!杯戸署生活安全課から来ました!青柳拓真です!」
「はこの部署の経験こそ浅いものの、元は刑事でそこからスカウトでうちに来た逸材だ。しっかりしごかれるんだぞ、青柳!」
「はい!!」
「じゃあ、後はよろしく」
「あ、はい」
そう、彼が私の教育担当。
……お気づきの方もいるだろう。
青柳拓真、聞き覚えのある名前だ。
え、まさか同姓同名?いや、顔もちゃんと覚えてる。
間違いない、この人は5年前に海水浴場でウミヘビに噛まれたあの青柳拓真さんだ。
こーんな再会の仕方ある…?
「…あの、どうしました?」
「えっ!あ、何でもない!」
彼の顔を凝視しながら考え込んでいた私を不思議そうに見る青柳くん。
「私は。よろしく」
「よろしくおねがいします!!」
「じゃあ早速、基本的な事から教えていくから」
「はい!!」
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青柳くんは、結構物覚えが良くて教える側もストレス無く進められた。
勝手な偏見だけど、こういう子ってやる気だけはあります!みたいなイメージだったから、意外と何でも卒なくこなすタイプらしい。
佐藤といい青柳くんといい、私の後輩は皆優秀で助かる。
「ねえ青柳くん」
「なんですか?」
「君、何で警察官になったの?」
知り合ったばかりなら割とベタな質問。
だいたいこれで話を盛り上げて、心を開いてもらうのがセオリーなんだな。
「あー、実は俺、大学時代に1回死にかけたことがあるんすよ」
そう言って恥ずかしげに人差し指で頬を掻く青柳くん。
うん、知ってる。
「で、そん時に助けてくれた人達がいて、その人達の応急処置のお陰で俺助かったんです。それ以来、俺も誰かを助けられる人間になりたいなって思いまして、自分に出来ることって何だろうって考えた時に浮かんだのが警察官でした。俺、体力には自信あるんで」