第16章 餌付け
ガチャリ
工藤邸の扉が開く音がした。
誰かが入ってきたのだ。
沖矢は、先程の彼女が何か忘れ物をしたのかと玄関へと向かう。
しかし入ってきた人物は予想していた彼女ではなく、小さなボウヤ。
「ボウヤか、どうしたんだい?」
「うちにお客さんを入れてもいいか聞いてきたからびっくりしたけど、まさかさんだったとはね。
…何したの?」
「おや、まさかコナンくんも彼女と知り合いだったとはね。
なあに、大したことはしていない。
ただご飯をご馳走しただけさ。
彼女、あまり褒められた食生活では無いようだったのでね」
「……何で?」
「…何で、とは?」
「あの人、赤井さんと知り合いなんでしょ?
何でリスクを犯してまであの人にそんな事したの?」
「…さあ、ただ気になっただけさ」
「それってもしかして……似てるから?」
沖矢は、何も答えなかった。
否定も肯定も出来なかったからだ。
「…別に昴さんを疑ってるわけじゃないけど、気をつけてね。
あの人、結構鋭いから」
「…ああ、分かっているさ」
それだけ言って、コナンくんは工藤邸を後にした。
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翌日、
「あれ、さん美味しそうなの食ってますね」
「あら青柳、お疲れ様。
これ、昨日知らない大学院生から貰ったの!あげないからね」
「え、知らない大学院生?それって男っすか?」
「うん。イケメンだった」
「…さん、今すぐそれを俺に渡して下さい」
「は!?嫌だよ!!あげないって言ったじゃん!」
「危ないですって!!知らない男から食べ物を貰うなんて、子供じゃないんですから!!
ほら、ペッしてください!ペッ!!」
「いーやーだーー!!プリンは私のもんだい!!」
「あ、逃げた!!こら待てーー!!」
足の速さで青柳が私に勝てるはずもなく、プリンは無事に私のお腹へと入っていったとさ。