第33章 ☆ 出発 * ロー視点 ☆ ① ☆
アヤは俺の頬に手を伸ばしゆっくり撫でた
「あのクナイは私の命みたいな物なの。あなただから…渡したんだよ」
アヤの目に涙が溢れ零れそうだった
俺はアヤの目元にキスを落とした
ロー)「待っててやるから命が危なくなる前に戻って来い」
「…うん」
俺はアヤの上から起き上がりアヤに手を差し出して立たせた
ロー)「船は出航してる。途中で下ろしていいんだな?」
「うん。皆はバレないように隠れてて。走っていくから!」
ロー)「分かった…怪我するなよ」
「しないよ!大丈夫!」
俺は笑っていたアヤに背を向け部屋にある机の引き出しからある物を取り出した
ロー)「…アヤ」
「何?」
アヤに体を向ければ背を向けた俺を不思議そうに見ていたアヤと目が合って手を出した
ロー)「お前が戻ってきたらこれを返す」
アヤの視線が手の上にある物に向いた
「え、私の心臓?」
ロー)「もう俺が持っとく必要はない。戻ってきたら返してやるよ。だから戻ってこい」
俺の手の中にあるここに来たばかりのアヤから取った心臓
俺がそう言えばアヤは目を丸くしていたがすぐに微笑んで笑った
「ふふっ。人質ならぬ物質だ」