「新テニ」理想のペア、Exciting situation
第5章 湫袋駅行き電車内での誘惑
「お、これが美味そうに見えるか。チョコのキャンディーだ」
「へえー」
「食いたいの?」
欲しそうにしている丸井に坊主頭の高校生が、まだ未開封の新しいチョコのキャンディーをポケットから出しました。
「いいんですか」
「いえ、遠慮します」
目を輝かせていた丸井の腕を引き、木手はそのまま五両目に連れて行きます。
「あーあ、欲しかったなー」
残念そうにしていた丸井です。
「丸井くん、今は子どもの外国人探しでしょう」
木手が呆れたような声で言いました。
「分かってるよ。あれ、キテレツ、手分けをして探すんじゃ・・・・・・」
「気が変わりました。あなた一人にしておくと何をしてしまうか」
「そんな、小さい子じゃねえんだから。あー、やっぱりお前、一人で外国人の子どもを探すのが心細いんだろい。素直にそう言えばいいのになー」
にっやーと笑った顔で丸井が言うと、
「勝手に言っていなさい」
先にスタスタと行ってしまった木手です。
五両目も座席と荷物棚を見ながら探した理想のペアでしたが、子どもの外国人は見つかりません。
「ここにもいないとは」
メガネの縁を片手に持ち、木手がつぶやきます。