第2章 任務
三日は特に何も無く過ぎて行った。周辺の村の見回りをし、朝になれば藤の花の家で休ませてもらっていた。昨夜は見回りの範囲を広げたが、特に鬼の気配は感じられなかった。
「移動しちゃったのかしら?」
「まぁ、考えられなくはねぇな。」
「どうする?もう少し範囲広げる?」
「そろそろ烏が言伝を伝えにくるだろ。その後でいいんじゃね。」
「そうね。」
あまりにも鬼の気配がなく、二人は相談して、お館様に報告を上げた。ここで待機か、一度帰宅になるか。どっちにしろ烏が伝えに来る。
「カァ、カァ。」
烏の声がして、楓は窓を開けた。窓の桟に実弥の鎹烏が止まる。
「オ館様ヨリ、伝令。モウスグ鬼ガ出ル。ソノママ見回リヲ続ケヨ。続ケヨ。」
二人は顔を見合わせた。二人共顔に緊張が走っている。お館様の言葉は外れない。もう数日のうちに鬼が出る。二人は思わず刀を握る手に力が入った。