第3章 --病院ではリスクが付き物ですね--
大人しい私に油断していたのか、体に手を添えられただけの私は一目散に沖矢さんに抱き着いた。
「おっと」
「あらら…急に怖くなっちゃったのかなぁ?」
いや、なんだろう…またとてつもなく拒否反応が。
避妊手術は大事だ。外に行ってコナン君とかと遊びたいし、その時に野良猫と交尾なんて……。
考えただけでゾッとする。
「まぁ強制はしていませんが、早めにすれば病気のリスクも低くなりますよ」
「分かりました」
「それとキャットフードと排泄に関してですが、野良猫ですし新たな環境で緊張しているのかもしれません。暫く様子を見て、進展しなかったらもう一度診察に。体の方は特に異常もなく、健康体ですので」
「はい。ありがとうございます」
話し合いの中、沖矢さんは私を抱きながらずっと背中を撫でてくれていた。
家に帰り、キャリーバッグから出されると頑張ったご褒美としてチューるを出された。
マグロ味だったが、舐めてみても微妙なお味。
んー…やっぱりおかしい。私は猫なのに猫用のフードがあまり美味しく感じられない。私はグルメ猫なのか?
あと排泄に関してだけど、あの猫砂に用を足すとか恥ずかしくて出来るわけないんだが。片付けるのは沖矢さんだし、排泄物を見られるとかマジで私の人生終わる。
「やはり食べないな…野良猫だから外部から与えられていたのは人間の食べ物だったのか?」
『ニャー(違いますよ!昨日から沖矢さんのしか口にしていません!)』
袋から直接皿にチューるを出して、沖矢さんはキッチンへと移動するべく立ち上がった。
沖矢さんもお昼ご飯かと思い、私も着いて行こうと思ったんだけど……。
「キッチンには立ち入ったら駄目ですよ」
『ニャー…(えー…)』
優しく頭を撫でられ、容赦なく扉を閉められた。
……猫ってジャンプ力良いんだよね?
てかこのドアノブレバー式じゃないのか…でもやってみる価値はある。
勢い良く飛びつき、頑張ってノブを回すと運良く開いてくれた。
その調子でダイニングキッチンであろう扉の前まで来て、扉を開けようとしたが……。
ガチャリと別のドアが開いた。
「えっ…」
『……』
ひゃああああああ!!コナン君じゃないかぁああああ!!!!