第5章 勉 強 会 と 夏 空
インターハイの東京都予選が終わった。我らが梟谷学園高校の結果は、全体の3位。最終のリーグ戦で、惜しくも敗れ、全国への切符は掴めなかった。
涙に暮れ、悲しむ時間はろくに与えられず、まるであの熱狂が夢だったかのように、またいつもの日常へと戻っていく。
高校3年生の夏休み前ともなれば、進路を本格的に考える時期でもあって。俺はまだ、もう少しだけ頑張ってみたくて、春高まで残ることを決めた。他の同級生も、同じだった。
「あかーしも俺みたいに実業団呼ばれたりした?」
部活終わり、誰からの着信かと思えば木兎さん。卒業してすぐ、そのままバレーのチームへと所属したらしく、毎日忙しそうにしている。そんな彼からいきなり電話が来るのは、珍しいことだった。
「まぁ、いくつか声は掛けてもらいましたけど」
「おぉ!」
「俺は普通に大学に行きたいので、
先生に頼んで全部断ってもらってます」
なぁんでだよもったいねぇよと電話口で騒ぐ人。
分かってないな。
俺は、木兎さんがいたから、梟谷というチームにいたから、ここまでバレーボールを続けてこられたし、プレーしたいと思っているのに。もう、既に、木兎さんのいないコートに寂しさすら感じています。
なんて、言ったら調子に乗るから、絶対に言わないですけど。
「春高までは残るつもりなんで、
気が向いたら見に来てくださいね」
ワカッタ!と元気な返事をする木兎さん、通話を切れば、少しの会話にも関わらずあの頃と同じ、疲労感。それすら心地好いと思いながら、俺は部室の鍵を閉めた。
傘をさせば、途端にパラパラとビニールの表面を雨粒が弾ける。6月の終わり、連日雨が降り続き、まだまだ今年も梅雨は長いと暗喩するかのよう。そうしている中でも、定期考査は近付いてきて。まぁ、今年は木兎さんがいないから少しは楽かな。
そう思い、そう言えば1年生に怪しい奴が何人かいたなと不安になる。あとでどのぐらいやばそうか聞いてみよう。