第3章 春 風 と 合 宿(♡)
そうして幕を開けたGW合宿、今回は連休が長いので、しっかり5日間の日程。どこのチームも春高で抜けた3年生の穴はすぐには埋まらず、試行錯誤と言ったところ。3年生が攻撃と守備の要だったこともあり、梟谷や烏野はまだ少しバタついている。
だがしかし、それはもちろん音駒とて同じことで。
「リエーフ、試合後半バンザイブロックだぞ」
「すんません!」
「灰羽くん、もうちょっとクロス締めれる?」
「分かったやってみる!」
「灰羽さんこれどうしたらいいですか?」
「あぁ〜ビブス洗濯だから、そこ積んどいて!」
初日にして、痛感する、力不足。プレイヤーとしても、コート外での指導にしても、自分がまだまだ未熟であると思い知る。
悠里が卒業して、再びのマネージャー不在は、プレイヤーからバレーに専念するための時間をじわじわと蝕んでいく。早速1年マネが入っている梟谷を恨めしく思いつつ、合宿でのあれこれを、もっと悠里に聞いておけばよかったと後悔した。
そうして、2日目も、自分のことと後輩のことでいっぱいいっぱいになりながら、どんどん時間は過ぎていって。
やっと、先輩たちが来る、3日目になった。
朝飯を終えて試合の準備を初め出した頃、開け放してある体育館の扉の向こうに、見慣れた姿があるのを見つける。
「悠里先輩!」
「ヘイヘイヘーイ!リエーフ元気か!」
悠里に駆け寄るより先に木兎さんに捕まる。後ろから木葉さんも出てきて久し振りの再開に話が弾む。
『わたしはお呼びでなかったかな?』
「めっちゃ呼んでました助けてくださいッ!」
すがりつくような必死の形相に、げらげらと笑われる。俺の疲弊っぷりは、日々のメッセージで分かっていたのだろう、夜久さんはなぜかすごく嬉しそうだ。
それから試合開始前の全体集合で、音駒と梟谷の卒業生の紹介があったあと、それぞれアップをして早速試合が始まることに。
監督やコーチに手土産を渡して談笑している悠里をぼーっと見つめていると、頭に衝撃。
「ほらリエーフ、イイトコ、見せないとね」
研磨さんはやる気を出させるのが上手いなぁと思いながら、俺はコートに駆け出した。