第1章 高 校 卒 業
新しい道を進む、
獅子と一緒に。
ところで。灰羽リエーフはとても緊張していた。
そして同時に、焦ってもいた。
卒業した先輩たちを見送り、そろそろ部活が始まるところで、大好きな先輩に告白するタイミングを見失っていたから。ストレッチをしながらうーんうーんと唸っているのを、研磨さんに声をかけられる。
「リエーフ、行かなくていいの?」
「え?何がスか?」
「いや、悠里、本当に卒業しちゃうけど」
俺の勘違いだったらごめんねと言い、研磨さんは2年生の輪の中へと戻っていく。まさか、気付かれてたなんて。でも確かに、今を逃したはもう、おれには勇気を出すチャンスなんて無い。
「すんません!おれ、ちょっと行ってきます!」
返事も聞かずに体育館を飛び出し、全力で走る。早く、はやく、悠里センパイが、帰る前に。捕まえないと、おれのものにしないと、じゃないと、遠くへ行ってしまうから。
ずっと高嶺の花だった。確かに仲は良いけど、友達にも先輩マネージャーが美人ってめっちゃ自慢したけど、それでもおれは、ただの後輩で終わりたくない、終わる訳には、いかないんだ。
おれを体育館に連れてきてくれた人、バレーボールを教えてくれた人、おれの、好きな人。
ローファーに足を通し、今まさに帰ろうとしているその小さな背中に、おれは吠える。
「悠里センパイっ!」
どうかこの想い、届きますように。
第1章 終