第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
バスに荷物を運ぶ時、仁花ちゃんが明らかに泣いた顔をしてたから、蛍に何したんだよって顔で睨まれる。こういう経緯で、って話したら分かってくれたけど、なんだか保護者みたいだねって言ったら頭を叩かれた。わたし、一応先輩なんだけどな。
窓から顔を出す烏野のみんな。ついこの間、ゴールデンウィークの時にも見たような景色。この夏も、色んなことがあったけど、みんな一回りも二回りも大きくなって帰っていく。
次の公式戦は年明けの春高、きっちり勝ち残って、またそこで会おうねって、約束した。
『仁花ちゃーん、またねー!』
「悠里さーん、ありがとうございまーす!」
顔を出してぶんぶん手を振る仁花ちゃん。風に靡く髪には、さっきあげたお揃いのシュシュ。わたしの手首にも、同じのがついてる。
前回同様、やっぱり蛍は窓から顔を出して手を振る、なんて可愛いことはしてくれなかったけど、手を振ったらペコって頭は下げてくれた。去っていくバスの後ろ姿が見えなくなるまで見送って、わたしたちは宿舎の片付けへと向かう。
『はーあ、終わっちゃったなぁ、合宿』
「俺はもう帰りたくてたまんないですけどね!」
『リエーフのえっち、研磨助けて』
「なんでそうなるんスか!?」
明らかにすけべなこと考えてるリエーフから距離をとり、間にワンクッション研磨を挟む。嫌そうな研磨の後ろから、ずいと出てくるのは黒尾。
「おふたりさん、
帰ったらヤることヤるんだろうなぁ」
『ここにも変態がいる、ほんとにやだ!』
コラ待ちなさいと言う黒尾の手をするりとかわし、走って逃げれば前方に黒のくせっ毛を発見。
『けーいじっ!』
「また灰羽と揉めたんですか?」
『んーん、大変態黒尾から逃げてる』
「あぁ、なるほど」
おい聞こえてんぞー、と後ろから叫び声。顔を見合せて、くすくすと笑った。
それから各校で使った部屋から布団を玄関へ運び出し、床を箒ではいて掃除して、使う前と同じくらい綺麗にして今度こそ撤収。立つ鳥跡を濁さず、ってね。
みんなは高校に戻って荷物を置いてから撤収だけど、わたしたちOBOGは直帰だから、ここでみんなとはお別れ。監督たちに挨拶を済ませ、ごねるリエーフをなんとか落ち着かせると、わたしと黒尾は森然高校を後にした。