第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
それぞれの課題や定期考査を無事にくぐりぬけた7月末、例年より少し早い梅雨明けを、待ちわびていたかのように蝉が喧しく鳴き始めた。
インターハイ予選でリエーフが右足首を捻挫してから丸々1ヶ月、ひたすらボールを触るだけ、ボール出しをするだけで、毎日練習したいスパイク打ちたいと涙ながらに連絡が来ていた。
病院での最後の診察を終え、監督とコーチから今日から軽いランニングとパス連に参加許可が降りたらしく、それは嬉しそうなスタンプがたくさん来た。やかましいけど、あのリエーフがよく1ヶ月も耐えたと思う。
『あ、そうだ
リエーフ、今日から復帰だってさ』
「1ヶ月間しんどかったろうな」
カフェテリアで課題をやっていた黒尾を捕まえ、ついでにアイスカフェラテのカフェインレスをご馳走させ、4限までの暇つぶし。
そういえば、研磨から夏休み合宿の連絡来たぞ、と黒尾がスマホの画面を見せる。コンタクトを忘れたので、ぼやけて綺麗に見えず、ちょっと失礼と言って画面をのぞき込む。
『ふむふむ、また今月末からかぁ』
「っ、おう」
『せっかくだからまたお手伝い行こうかな、
きっとだけど今年もBBQあるよね』
「だな」
なんかさっきから黒尾ヘンじゃないこれ。そわそわしてるし、落ち着かない感じっていうか。わたしは黒尾の方見て話してんのに、全然こっち見てくれないし。
『ねーえっ、黒尾!』
「うわ、バカ、お前前屈みになるな!」
『なんでよぅ!』
「だから、っその、見えてんだよ」
胸が、と、顔を背けて黒尾は言い放った。
胸、と首を傾げる。
『これ、そういうデザインなんだけど』
半袖丈のブラウンのカットソーは、胸元がブイの字に空いている。なんでも今年の流行りらしく、この間奏深と買い物に行って色違いで買った。ちなみにボトムスは淡い水色のデニム、これは高校生の頃からのお気に入り。
『見えてんじゃなくて、見せてんの』
「へぇ、見せるものあったんデスネ!」
『何さ、勝手に赤くなったくせに』
テツロークンは思春期ですね、と頬杖をついてニヤリと笑えば、黙れと吐き捨ててカフェラテを一気飲みされた。あぁ、わたしのカフェラテ。まぁ買ったの黒尾だけど。