第17章 幸せな音が溢れる世界で
「……さてと」
私は鯛めしがよそわれているお茶碗を手に取り、パクリと大きめの1口を口に含んだ。フワリと口に広がる鯛の旨味に
……美味しぃ…!
と舌鼓を打っていると
「煉獄。荒山」
にこにことしている霞柱様、視線を反らし僅かに気まずそうな表情を浮かべた蛇柱様、それから以前よりも穏やかに見える表情を浮かべた水柱様を引き連れた岩柱様がやって来た。
……まだまだゆっくりと食べられそうにないな
ほんの少しだけ残念に思いながら、けれどもそれとは比べ物にならない程の喜びを噛みしめながら、持っていたお茶碗と箸を置き、お膳に向けていた視線を正面へと向けた。
岩柱様たちとの話が終わり、4人が席へと戻った後は、栗花落さんにアオイさん、すみちゃんなほちゃんきよちゃんの5人が来てくれた。私はそこでようやく、機会を逃し、栗花落さんにずっと言えずにいたあの時のお礼を言うことが出来た。
5人が席へと戻り
……ふぅ…これでやっと落ち着ける
そう思った直後。
タァァァン!
子気味好い音と主に、襖が開かれた。
全開になった襖の真ん中には、左右に4本ずつ酒瓶を持った天元さんが仁王立ちしており
……一升瓶を左右合計8本……相変わらず化け物みたいな握力だな
口に出したら、即拳骨でも飛んで来そうなことを思ってしまった。
その後ろには、雛鶴さんまきをさん須磨さんの姿もあり、お酒だけではなく、私や成人前の子たちでも飲めそうな飲み物をお盆いっぱいに持っていた。
「待たせたなぁ!」
天元さんは、目にも留まらぬ速さでみんなのコップに酒を注いで行き、残り一本の酒瓶を右手に、それからいつの間に持ったのか、左手にラムネの瓶を持った状態で大広間の中心に立った。そしてその間に、雛鶴さんまきをさん須磨さんは、未成年組のコップにラムネを注いで行く。
天元さんは部屋全体を見回し
「全員行き届いたな。よし!お前ら全員コップを持って立ち上がれ!煉獄と鈴音は、空のコップを持て!」
と言いながら、こちらへズンズンと近づいてくる。
天元さんは私と杏寿郎さんの前で立ち止まると
「煉獄!」
と、大きな声で杏寿郎さんの名を呼んだ。