第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
その言葉に
「…っ…はい」
枯れたはずの涙が再び込み上げて来る。
「君の悲しみや怒り、それを一番理解出来るのは我妻少年の他いない。同じように、我妻少年が感じた悲しみや怒りを理解できるのは…君だろう?文1通で師の訃報を知らされた彼の悲しみは相当のものだ。そんな彼を、姉弟子として、君が支えるんだ」
「……はい」
結局涙を堪えることは出来ず、私の頬を再び涙が伝い落ちる。
杏寿郎さんはサッと立ち上がり
「ではそろそろ夕餉をいただくとしよう!千寿郎の作ってくれた飯は涙が止まるほどに美味いぞ!俺が温めてくるから、鈴音はそこで座ってるといい!」
サッと腕まくりをし、やる気満々な様子で台所へと向かっていく。
私は涙を拭いながら慌てて立ち上がり
「…っ…私がやります…杏寿郎さんこそ座っていてください」
杏寿郎さんの背中を追いかける。けれども
「遠慮などする必要はない!俺に任せてくれ」
杏寿郎さんは、慌てる私の様子など全く気にする様子はなく、千寿郎君が作ってくれた食事を温めようとでもしているのか、台所へまっすぐと向かって行く。
…杏寿郎さんに任せたら、せっかくの千寿郎君のご飯が食べられなくなっちゃう…!
「…っ遠慮じゃありません!お願いだから、杏寿郎さんは大人しくしていてください!」
杏寿郎さんの腕にしがみつき、なんとか止めようとするも
「散々泣いて疲れているだろう?なぁに!いくら台所仕事が苦手な俺とて、火にかけて温めるくらいはできる!」
と、まったく止まってはくれなかった。
結局やる気満々の杏寿郎さんを止めることは出来ず、隣にピッタリと張り付き、あれやこれやと口を出す事で、なんとか無事、美味しい千寿郎君のご飯にありつく事が出来たのだった。