第14章 秘薬を求めて※
どれだけ時間が経過し、何度果てを迎えたのかはわからないが、私の身体は杏寿郎さんのお陰でようやく落ち着きを取り戻してくれた。
「…疲れただろう?そのまま眠るといい」
「………杏寿郎……さん…」
油断したら途端に眠りについてしまいそうになるのをなんとこらえ
「…ごめん…なさ…い」
私は今日何度目かわからない謝罪の言葉を述べた。
杏寿郎さんは布団にうつ伏せになり、顔だけ杏寿郎さんの方を向けている私の眉間に
ツン
と人差し指を押し当てる。それから
「謝罪はもうなしだ。あの状態で鈴音を助けられる人間は俺の他いなければ、他の者に任せることなどどうあっても無理。何より俺としては、君のあんな姿を見られて役得としか言いようがないからな」
ひどく優しい笑みを私に向けてくれた。
「……はい…ありがとう…杏寿郎…さん…」
「うむ。さぁ、もう寝なさい」
眉間辺りにあった手が私の後頭部に回り、柔らかな手つきでそこを撫でてくれる。するとあっという間に眠気に襲われてしまい、私は眠りの世界に身を委ねるべく瞼を下ろした。
美味しそうな匂いに誘われゆっくりと目を開くと
「美味い!」
杏寿郎さんが普段のそれに比べると、10分の1位の声量でそう言いながら何かを食べているようだった。
その姿を見ていると
グゥゥゥゥ〜
私のお腹の虫が自然と騒ぎ始めてしまう。するとその音が杏寿郎さんの耳にも届いていたようで
「鈴音!起きたのか!」
パッと明るい太陽のような笑顔を私へと向けてくれた。
立ちあがろうと両腕に力を入れ、その後下半身にも力を入れようとしたその時
「…っ…痛…」
腰のあたりにズキッと痛みが走った。それに加えて
「…っ…何…この声…?」
カッスカスになった自分の声に驚愕し、中途半端な格好のまま静止してしまった。
杏寿郎さんはそんな私の前で片膝立ちになり、ゆるゆると優しい手つきで私の頬を撫でてくれる。