第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
けれどもさみしい気持ちよりも僅かに上回る羞恥心と理性が、素直に首を縦に振ることを許さなかった。
けれども
「恥ずかしがる必要などどこにもない。ここには俺と鈴音の2人しかいないだろう?」
杏寿郎さんはそう言いながら、口を覆っていた私の手にもそれを重ね
「何より俺は、君と初めて情を交わした時も、先日のそれも…どちらかの身体に薬の作用が働いている状態でしかまぐわえていない事に納得がいっていない」
そう言いながら手の力を強め、半ば強引に口を覆っている私の手も、合わせ目を握りしめていた私の手も取り払ってしまった。
「…確かに…それはそうなんですけど…」
…だからこそ恥ずかしいんじゃない…!
1度目のそれは遊郭に行くための条件を達成するために。2度目のそれは、杏寿郎さんが私の心をこじ開けるために。どちらもなんらかの理由があって起きた事である。
けれども今は…いや、今後は、互いの欲を満たしたり、愛を確かめ合うために交わされる行為になる。薬の効果もあったとはいえ、前回の行為で私は嫌と言うほど杏寿郎さんとの行為の気持ちよさも、そして杏寿郎さんに求められることの幸福感も知ってしまった。
…あんなの頻繁にされたら…私…杏寿郎さんがいないと駄目になっちゃいそうなんだもん…
そうなってしまう事が怖かった。
けれどもやはり、杏寿郎さんにはそんな私の考えはお見通しだったようで
「鈴音。恥ずかしがらずに俺を求めてくれ。俺はどんな君でも愛したい。俺を求め欲する…ありのままの君を見せてくれ」
そう言いながら私に覆い被さるような姿勢に変わり、横に向けていた身体を仰向けに変えられてしまう。
そして
「君に求められれば求められるほど、俺はどうしようもなく幸せを感じられるんだ」
そう言って
…ちぅ
と、私の唇に食むような口付けを落とした。