第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
「…俺も…もうダメだ…」
杏寿郎さんはそう言うと
ちぅぅぅぅ
と、私に激しい口付けを落とし
「…っいくぞ…」
「っ…やぁぁぁっ…だめっ…だめぇ…!」
私の奥の奥まで届くように私の身体を激しく揺さぶった。
「…っ…俺も…もう…」
額から汗を流し、吐息混じりの声でそう言った杏寿郎さんに、私の身体も心も、どうしようもないほどに杏寿郎さんへの好きで染まってしまう。
「…あっ…やっ…一緒…一緒がいい…っ…」
「…わかっている!」
「…あ…くる…んぁ…きちゃ…っんーーーーっ!」
今までで1番の快感が私の身体を襲い
「…ック…」
その直後、自分の中に温かな熱が広がって行くのを感じた。
あぁ…幸せ
そう思ったのを最後に
「…鈴音!?」
フワッ
まるで世界が真っ白になるように、私の意識は遠くへと飛んで行ってしまったのだった。
…暑い……それに…重い
そう思いながら薄らと目を開けると
ここは…どこだっけ?
見慣れない襖が私の視界に映り込んだ。横たわっている布団も全く知らない匂いと感触でなんだか落ち着かない。身体を起こし、部屋の様子を確認しようとした私はとんでもなく重い身体と、身体に回された筋肉たっぷりの逞しい腕に
…っ…そうだ…私…
ここがいったいどこで、今まで"誰"と"ナニ"をしていたかをようやく思い出した。だから振り向かずとも、背後から聴こえる寝息の主が嫌でもわかってしまう。恐る恐る自分の姿を確認すると、杏寿郎さんがそうしてくれたのか、あれだけ汚れた筈なのに身体の不快感はない。肌着も下履きもちゃんと身につけていた。
一方の杏寿郎さんは途中で放るように脱ぎ捨てた着流しをきちんと身に纏っている。
…起きる前に…帰らなきゃ…!
そう思い至った私は、私の身体をがっしりと抱きしめるその腕から抜け出そうとゆっくりと身体を動かした。けれども
ギュッ
「どこへ行くつもりだ」
当然のように杏寿郎さんは目を覚まし、私の身体を"絶対に離さない"と言わんばかりの強い力で抱きしめてきた。