第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
「どうした?」
にっこりと怪しい笑みを浮かべながら私を見下ろす杏寿郎さんが妙に情欲的に見えて、私の下半身からとろりと熱い液が溢れ出てくるのを感じてしまう。
「…っ…この薬…やっぱり…」
その先の言葉を口に出すことは、怖くてできなかった。
はぁ…はぁ…はぁ…
どんどん熱くなる身体を落ち着かせるように浅い呼吸を繰り返していると
「…君ならわかるだろう?これは…宇髄からもらったものだ」
杏寿郎さんは私の右耳に唇を寄せ、わざと息を吹きかけるように言った。
「…んぅ!」
たったそれだけなのに、私の口からは甘い声が漏れ出てしまう。ふと、頭に浮かんできてしまったのは、聞いてもいないのに須磨さんが私に話してくれた、天元さんが調合した薬…"媚薬"を試しに使ってみた時の経験談。
"あのときはねぇ…天国と地獄が一緒に来たみたいな感じでした!くノ一としては耐えなくてはならないんですけど、あんなの使われたら気持ち良すぎてどうしようもありません"
須磨さんは笑顔でそんなことを言っていた。けれども、その話をされた私は、語られたその内容のエグさに失礼ながら引いてしまった。
…その薬が…これ…なの…?
それが今、私に使われているだなんて信じたくはなかった。けれども確かに、たった一度しか経験のないはずの私の身体は
杏寿郎さんが欲しくて欲しくてたまらない
そう叫んでいた。
…やだっ…下半身が…うずうずして…もどかしい
それでも、なんとかこの疼きを堪えようと懸命に呼吸を繰り返す。杏寿郎さんはそんな私を追い詰めるように
「宇髄から鈴音に伝言だ。"反省しろこの馬鹿野郎"…だそうだ」
そう耳元で囁き
「んぁっ!」
私の耳たぶをガリッと、普通だったら少し痛みを感じるくらいの強さで齧った。
けれども今の私にはそれすらも快感になってしまい、なんとか繋がっている理性の糸が、ジリジリと音を立て燃え始めるのを嫌でも感じてしまう。