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音の溢れる世界でいつか【煉獄さん】【鬼滅の刃】

第5章 名前の知らない感情は


任務から戻った私は、居間で1人、雛鶴さんが作ってくれた美味しいおにぎりを頬張っていた。もぐもぐと美味しいおにぎりを咀嚼しながら、雛鶴さんがまな板でお野菜を切っている音を聞いていると、心も、そしてお腹も満たされていく。


美味しい。そして耳が幸せ。あ、でもそろそろあの包丁研がないと…切れ味が落ちてきてる。


そんな事を考えながらのほほんとしている私の元に、恐怖のお告げはやってきた。


「お。ここにいやがったか」


相変わらずなんの音も立てず居間に現れたのは、見廻りから戻って来た天元さんだ。
 

「おかえりなさい天元さん」


そう言いながら振り向くと、パチリと天元さんと私の視線が合った。すると、天元さんはニヤリと口の端を上げ


「荒山、お前にお館様より特別任務だ!」


ついこの間も聞いたような気がする台詞を宣った。その言葉は、美味しいおにぎりと、素敵な音で癒されていた私の心を一瞬で疲れさせるには十分すぎる破壊力を持っており、美味しいおにぎりと素敵な音で癒されたはずの私の身体に、どっと重さが戻ってきた。


「…また…ですか?」


端から嫌な予感しかしないんですけど。


私の眉間にグッと深い深い皺が刻まれた。


「そんなあからさまに嫌な顔するんじゃねぇよ。お前一応女だろ?その顔はねぇぜその顔は」


天元さんは腰に手を当てそう言いながら、私の眉間の皺を指差す。


「だって、前回の特別任務、色々と疲れたんですもん。…というか……まさかまた…炎柱様と一緒とか言わないですよ…ね?」


私の正面に座った天元さんに恐る恐るそう聞くと


「派手に察しがいいじゃねぇか!その通りだ」


天元さんはニヤリと笑いながらそう答えた。


…嘘でしょう。


先週、全く同じことを言われ、拒否権もなく苦手とする炎柱様と任務に赴いたばかりではなかったろうか。そして散々心をかき乱された挙句(勝手に私がそうなったと言えばそうなのだが)、天元さん、雛鶴さん、まきをさん、須磨さんに八つ当たりまがいなことをし、半泣きで謝ったのではなかったろうか。


嫌だ。行きたくない。なんでまた、私なわけ?まだ、気持ちの整理がついたとは…言えないのに…。


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