第4章 雪解け始まる微かな気配
「ほら。お前ら行くぞ」
そう言ってまきをさんの頭に、そして私の背中に手を置いた天元さんが、私たちを座卓に座るように促した。
「「はい」」
まきをさんと返事が綺麗に揃ってしまい、私がまきをさんの顔をチラリと見ると
「…なにさ」
照れ隠しなのか、ぶっきらぼうな返事が返ってくる。そんなまきをさんの様子が私にはとても可愛らしくて見え
「…なんでもありませんよぉ」
私がそう言うと
「何さその言い方!」
「っちょ…まきをさん!苦しいですからぁ!」
…本当は、そんなに苦しくないんだけど。
まきをさんは私の首に腕を回し、まるで首を絞めるような体制になりながら私を引っ張るように座卓へと近づいて行く。
そんな私達を、座卓に座っている雛鶴さんが"、しょうがない子たちねぇ"と言わんばかりの顔で、ニコニコと優しい微笑みを浮かべながら見ている。
その隣にいる須磨さんは"あぁあ!まきをさんが鈴音ちゃんをいじめてます!"と騒いでいる。
背後にいる天元さんは、"じゃれついてねぇで早く団子食おうぜ"と呆れながらも、穏やかな声色で言っている。
私、この場所が大好き。
「ここのお団子、本当に美味しいんですよ!皆さんに全種類2本ずつ…あ、すみません。天元さんだけ…一本ずつです」
「はぁ!?なんでだよ!?身体の質量から言って俺が1番食うだろうがっ!」
「…それはその…っ…」
「まぁまぁ天元様。私のお団子、差し上げますから、ね?」
「お団子も良いですけど、早く鈴音ちゃんのお話を聞かせてください!私もう、さっきからウズウズが止まらないんです!」
「一体鈴音からどんな話が聞けるんだろうねぇ」
自分でも知らなかった自分の部分を
知るのは怖い。
すごく怖い。
でもね
その恐怖の気持ちを聞いてくれる
心強い味方が
側にいてくれるから
少しずつ
少しずつ
そんな自分と
向き合っていこうと思う。
こんな私でも変われる日が来るのかな。
変わりたい…な。
✳︎第三章-完-✳︎