Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第4章 失恋はプロローグ:菅原
至近距離で、ごく、と菅原が嚥下した音がする。あの時も、お肉を目の前にした菅原の綺麗な喉仏が上下していた。え、それって私もお肉として見られてるってこと、さすがに違うか。
『え、っと、菅原さん…』
「ちょっと待っで、いま喜び噛み締めでる」
『なんか鼻声…? 』
「待って、まじで、ごめ…」
ずび、と鼻をすする音。それから、世都が好きって言ってくれたの本当に嬉しくて、と続ける菅原。
私にとってはあの時止まった時間が動き出したようなものだけど。菅原は、3年間か、それ以上も待っていてくれたのだ。感極まって泣いてしまうのも無理は無い、というか私が同じ立場だったら多分泣く、ぎゃんぎゃん泣く。
『付き合う、ってことでいいんだよね』
「なんなら結婚だべ」
『いやいや早すぎるでしょ、段階踏もうよ』
「ふぅん、段階、ね」
今ぎゅーしてるよね、と菅原。それから、これの次の段階って何するんだろうな、なんて嬉しそうに、でもちょっと意地悪に聞いてくる。
はぐの次、なんて、キスしかないでしょ。
『ちゅ』
「っ!?」
この人が私の事大好きなんだって分かったら、止まらなくって。顔を上げ、考えることもなく唇に唇をくっつけた。
ふに、と触れる柔らかいそれは、男の子とは思えないぐらいぷるっとしてて、ちょっとのお酒の味が、なんだか大人っぽくて。階段登っちゃったな、なんて頭の奥で思った。
「世都、それは…やばいって、俺我慢してんの!
世都ちゃんのこと大事にしたいなって!」
『私、そんなにヤワじゃないよ』
だから、
『もっとたくさん、ちゅーしたい』
「待って積極的な世都が可愛すぎる大優勝」
『照れ散らかしてる菅原も可愛くて好きだよ』
「急にデレ挟まないでくれる!?」
ああもう、と顔を隠されちゃったから、手ぇどけてって優しくその手を握れば、陽菜乃ちゃんってばそんなにイケメンだったのと菅原。
可愛い私も、かっこいい私も、これからは全部知って欲しくて。私はどこにも行かないから、菅原もどこにも行かないでね、なんて思いながら、唇を重ねる。
フラれて、止まってた時間を、今度は菅原と一緒に進んで行けますように、なんてね。