Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第3章 ☆YOU ARE MINE.:京谷賢太郎
悪い無理をさせた、とぎこちない手が背中をさする。あんな、もう、なんかすっごい、すっごいキスはできるのに、こういうところは不器用なんだから。
『どこで覚えたの、そんなキス』
「別に、やりてェと思ってしただけ」
『魔性すぎる...えろ魔神め......』
そうだとしたら、本当に本能とは恐ろしい。そして、さっきあんなにキスされたのに、またしたいと続きを少しだけ願っている私がいて、魔性はどっちだと心の中の自分を叱る。
しばらくそうしてハグをしていれば、おもむろに京谷が背中に回していた手を離し、距離をとった。
『あ、はぐ......』
「いや、これ以上は俺やべェ」
『何がやべぇの』
「知りたい?」
コレ、と私の手を掴んで導いたのは。
『なっ、え、わ、ぁう、ちょ、これ』
「分かったろ、イミ」
スリ、と布越しに手のひらに擦るそれは、京谷の、ムスコさん。キスしてたときはそっちに夢中で何も気が付かなかったけど、よく見ればジャージの向こうでむくりと起き上がっている。
っていうか、え、男の子のって、こんなになるんだ。熱い、硬い。怖くは、無いけど。知らなかった、どうしよう、どうするのが正解。え、なに。え。
あ、とか、う、とか、意味をなさない音しか口からは出てこなくて。思考がショートしている。ぱくぱくと口を開閉させて頭がいっぱいいっぱいになっていれば、くくっと京谷は笑った。
「陽菜乃やっぱかわいー、
けど外だし、こっちは、また今度な」
また今度って、いつ。
聞こうとして、やめる。だって自分から欲しがってるみたいだし、なんか痴女っぽいし。ていうか、それで決めちゃったら、もう戻れなくなっちゃうし。
今日一番に顔を真っ赤にしながら、私はこくりと頷いた。それから、京谷の顔が首筋に近付いて、ぢゅっと吸われる。なにこれと言えば、虫除けだと笑った。
京谷が部活に戻ってくれて、嬉しいのに、明日からきっと誰の顔もまともに見られない気がして。残りの帰り道、つないだ手の温度に、どうか明日が平和でありますようにと、願うばかりだった。