Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第2章 毒を以て毒を制す:二口
『さっきは好きって言っただけだし』
「だから付き合ってって、言ってる」
嫌とは言わせねぇよ、とニヒルな笑みを浮かべる二口。一体どこでどう間違えて私はこいつを好きになっていたんだろうか。
『仕方ないから、付き合ってあげるよ』
「おーおー素直じゃないなぁ
さっきは自分からキスしてきた癖に」
『うっ、うるさい、黙ればかにろ』
「お前が黙れな」
照れ隠しでいつもみたいに言い返せば、ぐん、と顎を掴まれ強引に二口の方を向かされる。そのまま重なる、3度目の唇。
一応通学路で、まだ学校の近くで、人気は無いとはいえいつ誰が通るか分からないのに。キスされて、少なからず喜んでいる自分がいるのはちょっと嫌で、でも好きな人と触れ合えることがこんなにも心地好いものなのだと知った。
ちゅ、ちゅ、と角度を変えて合わさる唇。顎を抑えていた手は後頭部へ回り、私は必死にその深緑のブレザーに縋り付く。
『ふた、っく、ち』
「んなエロい声出すなや」
『あんたの、せい、じゃん』
乱れた呼吸を整えようと、胸に手を当てて深く息を吸う。ドキドキと、高鳴る心臓は、紛れもなく恋だと教えてくるようで。どちらからともなく繋いだ手から繋がる温度が、なんだかとても愛おしくて。
『にろ』
「あ?」
『好きだよ』
「おう」
『にろは?』
「俺も好き」
ぎゅっと握れば、応えるように強く握り返してきて。それが嬉しくて、何回もやってたら、だんだんお互い力が強くなって、結局いつもみたいに喧嘩になった。
『痛すぎ、握力ゴリラ、ほんと無理』
「先にやってきたのお前だろーが!」
『女の子の手にそんな力込めるか普通』
「どの口がオンナノコとか抜かしてんだよ」
この口かよ、とまた不意打ちでキスされる。
『二口、調子乗ってる』
「の、ってねーし」
『絶対乗ってる』
「乗ってない、けど、ちょっと浮かれてる」
『.........可愛い奴』
「あー、まじ襲いてぇ」
『3ヶ月まではキスしかしないから』
「待てそれは尋問すぎる俺が悪かった」
『やだよーだ』
いつも通り、笑うふたり。
昨日までと違うのは、繋いだ手の温度。