Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第1章 ★Vê você:日向
背景、お母さん、お父さん、
私は今、17,000キロも離れた異国の地にいます―――
外国語が好きで、異文化が好きで、そんな興味やら何やらが留まることを知らず、ついには海外留学にまで手を染めた。ヨーロッパと南米の歴史に興味を持ち、ブラジルへの留学を決めたのは大学1年の初夏のこと、それから秋には飛行機に飛び乗っていた。
ご近所さんと井戸端会議的なものが出来るようになり、ルームシェアをしているオネエサン(とってもセクシー)ともオシャレやらメイクやらの話が出来るようになり、少しはポルトガル語にも自信が持てるようになった。
それでもまだ、ふと日本が恋しくなる時がある。
ブラジルは沖縄みたいな気温だから、時々あのキンと冷えた冬の空気を懐かしく思うし、日本の四季がどれだけ素晴らしいのかを改めて思うのだ。
ブラジルに帰化した日本人や日系ブラジル人も居るとはいえ、その数は決して多いとは言えないから、たまにちょっと寂しい。かと言ってブラジル人の恋人を作る気にも慣れず、大学に通ってはバイトをする日々を繰り返していた。
「エウ ケーロ アグア、ポルファボル」
バイト先のハンバーガーショップ、店内のポップなBGMにややかき消されながら、カタコトのポルトガル語が聞こえてくる。
オレンジ色の髪の、クリっとした目の青年。少年、と言うにはやや大人びているが、大人の男性らしさはまるでない。それに、丸っこい顔にやや黄みがかったその肌は、なんとも───
『japonês!(日本人っぽい!)』
思わずカウンターから身を乗り出してしまい、青年がびっくりする。しまった、驚かせてしまっただろうか。青年の丸い目がパチッと瞬きをし、、そして私の胸元のネームカードを見て飛び出そうなくらいに見開く。
「エッ!ニホンジンデスカ!」
カタコトのポルトガル語に負けず劣らずカタコトの日本語は、彼の出身が同じ日本であることを分かり易く物語っていた。まさかの同郷の子との出会いに、コクコクと頷く。
『あっ、あの、この後時間ありますか?!』
自分でも突拍子がないと思いつつも、年の近そうな日本人に会えた高揚感が抑えられない。