Volleyball Boys 3《ハイキュー!!》
第5章 ★はないちもんめ:角名
「なんで、なんで角名なんや!
ぜっっったい俺の方がええ男やろ!?」
「俺のだし、触んな」
ぺいっと侑くんの腕を振り払うと、角名くんは私を後ろからぎゅうっと腕の中に閉じ込めて抱き締める。わなわなと、分かりやすく動揺する侑くんを、治くんは冷ややかな目で見詰めている。
「嫌や、俺は信じひん、
陽菜乃ちゃんが角名に抱かれたなんてそんな」
「ツム、諦めろ、事実や」
「嫌だアアアァァアアァ───ッ!」
「ツム!」
とち狂って体育館を暴走機関車のように走り出した侑くんに、角名くんは大爆笑。治くんも呆れ果て、ボール取ってくると器具室に向かう。
ちょうどその時、遅れてきた銀くんが入ってきて、角名はイチャついとるし侑はイカれとるしトイレに行った間に何が起きたんと怪訝そうな顔をする。本当に、その通りだと思う。
『そんなわげで、わだしの喉が死にましだ』
目の前では、物凄い私怨をこめて強いスパイクを打ち込む、パス練習らしいものをしている侑くんと角名くん。ものすごくコンパクトに昨日の出来事を伝えると、治くんと銀くんは納得したらしい。
「プレーだけやなくて夜もネチネチしとんのか」
「嫌な言い方するなぁ、治」
『もうしばらぐはむり…』
「「同情する」」
『…なら金をくれ』
そんな軽口を叩きながら、私はふと思いつく。
『なぁ、治くん、困ったら
いつでも相談乗ってぐれるっで言うてだよな』
「おん、角名と別れる?」
『どうしたら、倫太郎に夜勝てると思う?』
ブフォ、と綺麗に飲みかけのスポドリを吹き出した銀くん。バカ汚いやろと言いながら、治くんが手にして拭いている布は、さっき侑くんが脱ぎ捨てたワイシャツだ。かなり動揺しているらしい。
「す、角名の趣味は、結構キツいのやで?」
『あぁ、だからか…』
「だからか、って……なぁ、帰りたい、
チームメイトのそんな話聞きたないて」
「銀、行くな、俺もしんどいねん」
『私の未来の安寧、2人にかかってるんやけど』
「「無理です」」
そんな会話が繰り広げられているのを知ってか知らずか、侑くんはガムシャラに角名くんにスパイクを打ち込む。難なくそれを返しながら、角名くんはそれは愉快そうに笑っていた。