第13章 傘
しとしとと雨が傘に当たる音がする。
私は目の前の男から目が離せないでいた。
相変わらずの男前である。
「がっかりさせてすみません。普段はこんな感じで…」
「がっかり?たしかにあの時の君は美しかったですが、その評価が下がることはないですよ。」
壁に手をつき、ぐっと顔を寄せてきた。
「ちょっ…近いですっ!」
「ほら、目や表情はあの時のまま。美しいですよ。」
ど、どうしてみんな揃いも揃ってそんなキザなんだ!
元の世界でそんなことを言う人いなかった!
「あ、ありがとうございます…。でも…あれはやっぱりあの時の雰囲気があったから…」
「遊びだったと?」
「そこまで言いませんが…」
でも、今すぐあの時のようにこの人の手を取れって言われてもやはり無理だ。
「では、もう少しこのイヤリングは預かっておきます。」
「…ん?」
「連絡先教えてください。」
「…えぇ。」
私のスマホにはバイト先の人と義父の孝臣さんの連絡先しか入っていない。
まぁ、でもこの人はパーティーの出席者で、ただの園子ちゃんの母の知り合いなだけだろうし、きっと重要な登場人物ではない。
私は携帯を取り出した。
「今度飲みにでも行きましょう。僕は君にとても興味がある。」
すっと手を取られ、あの時と同じように私の手の甲に音を立ててキスを落とした。
「…っ」
「その時にこれをお返ししますよ…シンデレラさん。」
手を持ったままチラリと私を見上げ、にこりと笑うと、昴さんは雨の中帰って行った。