第130章 そんなの知らないっ!
広いリビングで時計の音だけが流れた。
私が落ち込んでいると思ったのか、降谷さんは心配そうな顔でずっと私の横で頭を撫でたり、背中を撫でたりしてくれた。
だけど、実際私はそれほど落ち込んだりはしていなかった。
というより、まだピンとこないというか、実感も湧かず、『…私が?本の登場人物?』って感じで、信じられなかった。
それよりも、気になる事が…。
「ヤンキー漫画の…主人公の…恋人。……やだ。それになんで私が主人公じゃないんだ。」
「気になるのはそこか?」
「もし、向こうの世界に帰ったとしたら、主人公の恋人になるってことかな。」
「うーん、一種のパラレルワールドじゃないかと思ってる。」
「パラレルワールド…。」
「めぐみは実際にここにいるが、漫画を見てもそこにはめぐみはいたし、物語は最終回まで連載して終わってる。」
「…うん。」
「めぐみがもし帰ったら、また帰った時のひとつの世界線が出来る。」
「…うん?」
「まぁ、ようするにめぐみは同じ世界に二人として存在しない。ってこと。」
「…うーん。」
わかったような…わからないような。
「いいんだよ、めぐみ。難しいこと考えなくていい。めぐみは向こうの世界に帰る必要はないし、上層部もその考えだ。」
「私はこの世界にいていい?こっちにいることで不都合はない?」
私が気になっていたことを恐る恐る聞くと降谷さんは優しく微笑んだ。
「大丈夫。めぐみは被害者だ。僕達はそんな君を守るし、無理に帰したりしない。」
「降谷さんの…そばにいれる?」
「そばにいて。」
後頭部に手を置かれて、引き寄せられた私は降谷さんの肩あたりに顔を埋めた。
よかったーー…。
帰る方法があるなら、向こうの世界に帰れって言われたらどうしようかと思っていた。
「私はこれからどうしたらいい?」
「今証拠を固めてFBIと捜一と公安とで協力して小塚製薬を追い詰めて行ってる。」
「…すごい。」
「汚職事件に横領に違法合成薬…まとめて根絶やしにするつもりだ。小塚を潰せばきっと雇われためぐみを狙う組織もいなくなるだろう。それまでもう少し隠れてもらうことになる。」
「わかった。…やれることが有ればなんでもするから。」