第118章 右腕
「えっと…帰りに、零さんが着る服を買おうかと思って…いい?」
降谷さんの袖を掴むめぐみさんは、いつものさっぱりとした性格のめぐみさんとは違って、少しぶりっ子の入った話し方にたまらず眉を寄せてしまった。
ーーらしくない。
だと言うのに、うちの上司ときたら気付いていないのか、いつもと変わらず返事をしていた。
今までローラが降谷さんの服を買っていた。
それを急にめぐみさんが買うと言いはじめたのだから、絶対に何かあるはずだ。
「ローラ。彼女にこれからは服の購入を頼むことになったから。少し君の負担が減ると思う。」
と、降谷さんはローラに向かって行った。
ーー負担が減るとかそう言う問題じゃない。
ローラの頬がピクピクしていることに気づいていないのか、この鈍感上司は。
ベッドにいる自分の視点からは、めぐみさんは一番近い場所にいるが、背中を向けている。
降谷さんの死角からローラへ笑ったのか、何かしたのか、ローラの鼻の上に皺がぎゅっと出来上がった。
「わ…っかりました!では、領収書は必ずきってくださいね!」
「はーい!また教えてくださいね?ローラさん?」
ーー怖い。
ドラマみたいな笑顔の女の戦いをこうも間近で見ることかあろうとは。
何が一番怖いって、何も気付いていない上司がその間に突っ立っていることだろう。
ーー…この先大丈夫なのだろうか。
と、また別のことで胃をキリキリとさせてしまいそうだった。