第111章 笑顔で
「ヘイタクシーーー!!」
もう怒りやら、虚しさやら、悲しさやら…色んな感情が私の中でぐちゃぐちゃになっていた。
大声でタクシーを止め、さっさと乗り込んだ。
阿笠博士の自宅を目的地として頼み、私は大きくため息をついた。
『貴方の代わりはいくらでも』
「うるせーやい。」
ぽそっと呟き、溢れ出そうになる涙をぐっと我慢した。
今日も、安室さんは彼女が買ってきた服を着て、笑顔で何事もなくポアロで働くのだろう。
「私だって…ポーカーフェイスくらい…」
前から何年も一人でやってきたのだ、それが戻っただけ。
地味に笑わず目立たずコソッと生きていけばいい。
タスシーから降りて、私は阿笠邸のインターホンを鳴らした。
すぐにコナンくんが出迎えてくれて、大きなリビングに通された。
「昨日と今日とでありがとう、コナンくん。」
「あぁ、さっき俺から灰原に話したんだ。」
もう小学生のフリはするつもりはないらしく、工藤新一くんとして話をしてくれるらしい。
「哀ちゃんもありがとう。」
「貴方が初めて会った時に私を子供扱いしなかったことに納得がいったわ。」
「…ごめんね。黙ってて。」
「かまわない。こんなこと簡単に人に言えるじゃないことくらい誰でもわかるわ。」
身体は二人とも小さいのに、本当に頼り甲斐のある二人だ。
「おぉ、めぐみくん。いらっしゃい。今日は何やら大事な話らしいの。わしは地下でパソコンをしておるから、何かあったら呼んでくれたらいいからの。」
「ありがとうございますっ!」
私たち3人にホットコーヒーを出してくれて、阿笠さんは階段降りていった。
見えなくなったのを確認して、哀ちゃんが私を見た。
「貴方が飲んだという薬。それは黒の組織とは関係ないわ。」
「…そうかぁ」
残念なような、安心するような…複雑な気持ちだ。
「私の知らないことももちろんあるからなんとも言えないけど、知っている限りそんな研究をしていたとか、過去の研究とかでも資料を見たことも聞いたこともない。」
「じゃあ、別の組織か。」
「恐らくね。…それで、ひとつ確認しておきたいことがあるの。」
哀ちゃんに聞かれ、私は顔を上げた。