第109章 キス
降谷さんの心臓の音が聞こえる。
私はドキドキしているから私の心臓の音の方が早く感じた。
私の髪の毛をサラリと撫で続ける降谷さんの手が心地よかった。
しばらく腕枕をしていたが、降谷さんがもぞっと動いた。
私を覆うように肘を私の横につき、もう片方の手でまた私の頬や頭を優しく撫で始めた。
「…?どうしたの?」
いつもより…優しい。
ふわっと笑うと角度をつけ今日はじめての深いキス…。
ゆっくりと味わうように。
「…ふ…」
舌を絡め、見つめ合い、ゆっくりと優しいキス。
激しくないキスなんて…逆にはじめてかもしれない。
でも、凄く気持ちよくて、胸が熱くなった。
最後にちゅっと音を立て離れると、降谷さんは少し寂しそうに笑い、またベッドに横になった。
自然とまた腕まくらをしてくれた。
いつもと違う降谷さんに私は黙って彼の腕に頬を寄せた。
「7年前…」
「…?」
ポツリと話し始めた降谷さんの顔を見上げると、降谷さんは天井を見つめていた。
「警察学校の同期で仲良くなった仲間がいたんだ。その中の一人が爆発に巻き込まれて殉職した。」
「…うん。」
1度コータさんから降谷さんの同じ班のことは聞いたことがある。
優秀だったと…。
それだけだったが。
「三年前、また一人、沢山の人を救うために一人犠牲になった。」
「…。」
「1年前、捜査中に交通事故でまた一人…。」
「…。」
「ヒロは…僕の幼馴染だった。一緒に警察官になろうって。」
降谷さんは手を天井に伸ばした。
腕を枕していた私もその手を見つめた。
赤井さんが言っていた人のことだろうか…。
「その親友もあの組織へ潜入捜査中に殉職したーー…。」
降谷さんは自分の手のひらをぎゅっと握りしめるとその拳をおでこに置き、そのまま話を続けた。
「警察仲間の中で、僕一人になった。一人…また一人といなくなっていく中で、毎回立ち直るのに時間がかかった。すごく……すごく時間がかかった。でも、あいつらの志を…信念を諦めるわけにいかないと今でも立って進んでる。」
「うん…。」
腕まくらにしていた腕が私をぐっと引き寄せた。