第108章 腕まくら
夕方、パソコンの前でお昼のやりとりを思い出して一人ドキドキしていた。
『言わせるな。』って言われて、こつんと小突かれたときの、チョット拗ねた感じの安室さんが、不覚にも可愛いと思ってしまった。
かっこいいくせに、ああいう一面見せてくるのズルいと思う。
「何、にやにやしてんだ。」
「あ、おわりました?」
私の業務は既に終わっていて、安室さんがオモテを閉めてくるのを待っていたのだ。
「あぁ、終わった。車回してくるからここで待ってて。」
いつもなら一緒にいくところだが、今日ばかりは仕方ない。お言葉に甘えることにした。
安室さんのななちゃんに乗り込み、二人で安室さんの家に向かう。
あまりに自然な流れで私も素直にお持ち帰りされてる気もするけど…。
車を走らせる安室さんの横顔をじーっと見つめた。
「なんだ。」
「ふふ、ううん、なんでもない。」
好きだなって思う。
そばにいたいし、怪我をしたら治してあげたいし、これから先も一緒にーー…
なんて、贅沢な夢を想像しては、いつも最後悲しくなる。
彼は日本を守ることを使命に自分を抑えてでも、前を見て戦っている人だ。
ーー『わきまえてください。』
そうだ。
彼女の言う通りだ。
「わきまえます。」
「…は?」
「いえ、なんでも。」
■□■□■□■
安室さんの家に久しぶりに入った。
キッチンに立つと安室さんがこちらに振り向いた。
「今日は深呼吸して匂わないんだな。」
「静かに吸い込んでます。」
安室さんの匂いに包まれた瞬間一気に緊張に包まれた。
「本物匂えばいい。」
そう言って、ぎゅうっと強く抱きしめられた。
目の前には安室さんの胸板。
私はその胸にすりっと頬を寄せた。
肌触りのいい服ーー…。
ふと、見ると黒と白のボーダーの服だ。
ポアロではエプロン着ていたし、車では薄手のシャツを羽織っていたから目立ってなかったが。
ーー…どこかでみた気がする。