第99章 バーボン【その2】
あまりの心臓の音に周りの音が聞こえないほどだ。
ドキドキドキドキーー…
もちろんときめきの鼓動なんかじゃない。
恐怖だ。
ーーーどうしよう。
安室さんだ。…ジンが来た時点で彼が来る可能性を考えるべきだった。
ケビンさんの影に隠れている私にはまだ気付いていないようだが、こんなカーテンに仕切られた半個室のような場所。
バレるのも時間の問題だった。
ーーちょっと目を細めて別人だと言い張る?
「僕の仕事?何をすればいいんです?」
ジンは私がもらった名刺をそのままバーボンに向かってピンっと投げて寄越した。
「五日後そいつを始末する。それまでにそいつのことを調べ上げろ。」
「…まったく。名刺だけで簡単に言いますね。」
名刺を目にしたバーボンは裏を見てみたりして、クルクル回してる。
「見た目の特徴はコルンも知ってるが、実際話したのはその女だ。話聞いとけ。」
「女?」
ひっ!!!
…ば、バレる!!殺される…!
「お店の女性を巻き込んだんですか?口止めがめんどくさいから僕はそういうのあまり好きじゃ…な…いん…ですが。」
目があった。
無駄に目を細めて別人のフリしたけど。
「…。」
「…。」
一瞬の間。
バレた。
バーボンの目がピクリと動きたのがわかった。
「口止めなんて、てめぇの得意分野だろ。その顔と体使っとけ。女なんてすぐおめぇの言うこと聞くだろ。」
「ハニートラップなんて割にあいません。」
「はっ、よく言うぜ。何人の女騙したんだ。」
「…これから騙そうとしてる女性の前でそんなこと言わないでいただけますか。」
…だ、騙される!
「女、酒。」
「は、はい!」
「俺が頼む前に気づけ。」
「はい、すみません。」
「ジン、ユメ怖がらす、ダメ。」
「はっ骨抜きかよ。」
ロックを作ると慌てて立ち上がり、バーボンの後ろを通りジンのお酒を取り替えた。
再びケビンさんの元に戻ろうと、バーボンの後ろを通った瞬間、「ユメ?」とバーボンがちいさく呟いた。