第96章 梓からの相談
2日後の昼下がり。
落ち着いた店内でコップを磨いていた。
「で、どうだったの?旅行は。」
鍋をしまいながら梓さんがニコニコ笑みを浮かべ私をみた。
「んー?楽しかったよー。温泉気持ちよかった。あとでお土産渡すね。」
楽しかったけど、最後に不本意に日本酒飲まされて、ずっと怒ってた気がする。
…車の中とか態度悪かったかな。
「お土産?嬉しい、ありがと!ねぇ、そんなこと聞きたいんじゃないよ。一緒の部屋でしょ?当たり前だよね!」
「んーまぁ。」
「そっかそっかぁー。」
ふふって笑いながら仕事をする梓さん。
顔を赤くしてにこにこしてる。
何を想像しているのかわからないけれど…たぶん想像通りだよ!
夜はずっとやってたよ!
言わないけど!
「そうだ、めぐみちゃんに相談したいことがまたあるの…。」
「また何か道具?コスプレ?」
「違うわよ!…もっと深刻で。」
いつもより真剣な表情の梓さんに私は作業している手を止めた。
何か困っているようだ。
話を聞こう身構えると来店を告げるベルが鳴った。
「いらっしゃいませ。」
梓さんは話すのをやめ、お水を用意し始めたので、私も来店してきたお客さんの方に目を向けた。
…あ。
私は彼を知っている。
一度赤井さんとパーティーに潜入した時に彼と同行したことがある。
「いらっしゃいませ。」
あの時はパーティードレスにメガネもせず、メイクもバッチリだったからきっと今の私には気付きはしないだろう。
梓さんがお水を持っていくと、彼は何やらキョロキョロとしている。
「あの…今日は彼は…。」
「彼?男性店員のことですか?安室さんなら今日はお休みですよ。」
「よかった。じゃあアメリカンを。」
梓さんとの会話を横で聞きつつ、私はカウンター内でアメリカンの準備をした。
カウンターに梓さんも入ってきてチラチラ彼を見ている。
「安室さんの知り合いの方かな?」
「…さぁ。」
ここは知らないふりがいいのだろうか。
FBIの方だったと思う。
名前は……たしかーーー…
キャラメルだかそんな感じの、甘そうだなって思った気がする。
あぁ、本当に自分の記憶力が憎らしい。