第91章 休暇 2
「僕はあれもずっと気になっていた。高橋のことをいつの間にか名前で呼んでいただろう?」
「それはいつだったか、公安って本名で一般の普通の人から呼ばれることがないって。偽名を使うから…だから、名前を知ってくれている私には名前で呼んでくれないかって言われたの。」
そう私が言うと、安室さんもなんだか少し寂しそうな表情になった。
「そうだったんだな。」
安室さんはどうなんだろう。
コナンくんや梓さん達みんなからは『安室さん』って呼ばれることに関して何か思うのだろうか。
もう呼ばれ慣れて定着しちゃったのかな。
前に総長になりきって『零!』って呼んだことはあるけれど…あれは応援というか、激励というか…そのためだけに呼んだだけだ。
「旅行中の部屋にいるときだけ僕も名前で呼んでもらおうかな。」
「…っ!?」
安室さんは自分の膝に肘をついてニコニコ笑いながら私を見ている。
「外ではさすがに安室透じゃないとダメだけど。」
「つ、使い分けられないよ。間違えちゃう。それに…名前は恥ずかしい…」
名前なんて…その時の勢いとノリがないと呼べない。
「コータさんって高橋のことは呼べるくせに?」
「うっ。」
「ほら、呼んでみて。」
立ち上がって私の椅子の近くに寄ってきた。
ドキドキする。
横に立って私の背もたれに片手を置くと、ぐっと顔を近づけてきた。
「ほら。呼んで。」
「……えっ…と…」
面と向かって言わなくちゃいけないハードルの高さ。
そんなに顔を近づけてこなきゃダメ?
「……れ……れ」
「ん?」
コンコン
「失礼いたします。お食事の準備をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
ビクッとして安室さんの胸をグッと押した。
安室さんはあからさまな舌打ちをしてから、私のオデコにキスを落とし、「どうぞ。」と部屋の外の仲居さんに声をかけた。
仲居さんが部屋に入ってくる瞬間、安室さんは私の耳元に口を近づけて囁いた。
「後が楽しみだ。な?めぐみさん?」