第79章 花火
安室さんについていくと、本当に廃ビルに入っていく。
遠くでドンドンと音がし始めた。
「あ、花火。」
「始まったな。行こう。」
カンカンと階段を上がっていると、上をいく安室さんが私に手を差し出してくれた。
その手を取って階段を登る。
浴衣で上がりづらい階段を安室さんが引いて歩いてくれた。
…手を繋いだのは初めてだ。
外でこうやって歩くこともあまりなかったから…。
「ついたぞ。」
屋上に着くと私は目を奪われた。
手を離し、柵に近づく。
「わぁ……すごい。」
お囃子が聞こえ、下にはキラキラ耀く出店たち。
そして、夜空に咲く大輪の花火。
「安室さんっ、すごい!特等席だ!」
「…そうだな。」
ドン ドン と、次々あがる花火を見上げていると、腰の後ろにそっと安室さんの手が添えられた。
「…?」
安室さんの方を見ると、今までにないくらい優しく綺麗な表情で私を見て微笑んでいた。
「めぐみ…」
花火を遮るように安室さんの顔が近づく。
ちゅっと、軽くキスをするとイタズラが成功したみたいな嬉しそうな顔をして離れていった。
「安室さん…連れてきてくれて、ありがとう。」
一度は離れていた手を私は再び繋ぐように握りしめた。