第76章 カップ
武器密輸組織とのことが終わって、私の中で平和な日々が戻ったと勘違いしてた。
事件は次々と起こって、安室さんはずっとそれに立ち向かっているんだ。
「…梓さん、私。」
「安室さんところいく?」
「…。」
「あとは任せて。もう夕方だし締めはしとくよ。」
「ありがとう。」
勘違いしてた。
私に怒ってポアロを休むなんて、冷静に考えたら責任感のつよい安室さんがそんなことするはずなんてない。
ロッカーで荷物をもつと、私は携帯を取り出しコータさんにメールをした。
『彼に会いたい。どこにいったら会える?』
『下で待ってて。』
下。
きっと警視庁のロビーのことだろう。
私は急いで電車に乗り込み警視庁に向かった。
警視庁について、ロビーでキョロキョロしていると、通路の奥からコータさんが来た。
…ヨレヨレだ。
「やっときた。」
「…ごめん。コータさんもなんか…」
「今、宗教団体絡みの案件かかえてる。…眠い。」
どんどん進むコータさんの後ろをついていく。
「何か持ってくればよかったね。買ってこようか?」
「いや、それより上司の機嫌とってきて。全力で。」
「…はい。」
通されたのはいつもの降谷さんの机がある狭い執務室。
「この中?」
「あぁ、多分今は降谷さんだけだと思う。」
「降谷さんっていつもなんの缶コーヒー飲んでる?」
「それならあっちの突き当たりにあるブラックだよ。」
「ありがとう。買ってから行くね。」
「ひとつ俺から助言。つか、やってみて。」
こそっと小声で話そうとするコータさんに私は耳を寄せた。
「…それは、うん。が、頑張ってみる。」
「ぜひ頑張ってほしい。これからの日本の平和はめぐみにかかっている。」
「大袈裟な。」
「んじゃ、俺向こうで他の仕事してるから。あー、鍵かけろよ?」
「…そんな見られて困ることしないもん。」
「めぐみはそのつもりでも、降谷さんは違うかもしれないだろ。」
「し、しない!」
「もし風見さんにでも見られたらメガネ割れるぞ。あの人。」
「鍵かけます…」
「ん、じゃあよろしく。」
廊下を後にするコータさんを見送って、私は降谷さんがいる部屋をノックした。