第53章 あの時の私
「そんなこと言わず助けてください…!じゃないと俺たち湘南の奴らに吸収されちまう…」
ぴくり。
湘南…?
「それにあいつら千葉の木更津の奴らとも組んで俺たちを従わせようとしてる…」
木更津…?
「話を聞こうか?」
私は彼らの正面に座った。
世界も世代も違うけれど、あの南の奴らに何かされると思うとなんか気に食わない。
彼らは順を追って話した。
最近湘南と木更津の奴らが急激に力をつけ始め、小さなグループをどんどん吸収して行っているのだそうだ。
そこのリーダーの男が今度は自分達に目をつけてきて、会合を開きたいと申し出た。
なんだか怪しい動きがあるようだから、断りたいから私にリーダーの代理として参加して欲しいのだと…。
「貴方達のリーダーはどうしたの?」
「それが…その……今妊娠8ヶ月でして。」
「おぉ……おん、おめでとう。」
リーダーでどうにかしろ!って言ってやろうかと思ったけれど、そうも行かなくなった。
「あいつらに舐められたら困るから、期間の変更はしたくないし、リーダーの変更を知られたくない。めぐみさんには今のリーダーのフリをしてもらいたいんです!お願いしますっ!!」
「…仲間内でどうにかできないの?女性メンバーだっているでしょう?」
私がそう言うと、男の一人がバンっと机を叩き立ち上がった。
「俺に箒を突きつけ!たった『帰れ』の三文字で俺は服従を誓うほどの威圧感と覇王のようなオーラ!」
「覇王て…」
「そんな女性はリーダーの他に貴方しか!!いや、今のリーダーにすらここまでの資質はないかもしれない!お願いします!!
会合でただ座ってくれるだけでいい!俺たちが相手と話をするので!!」
「うーん…座るだけ?」
「はい!!リーダーらしくバックで座ってくださればそれでいいです!」
「うーん…でもなぁ……」
私がどうしようか迷っていると、座っていたもう一人と男が私の耳にそっとつぶやいた。
「もちろんお礼はいたします。」
「いや、お礼は別に…」
「これとか…これでも。お好きなものを…」
男にスマホの画面を見せられ、私は即答した。
「よし、任せろ。」