第47章 黒い夢【序章】
「…ちゃん!おーい!めぐみちゃん!」
私を呼ぶ声で私はハッとした。
「大丈夫?汗ひどいけど。体調悪い?」
「あ…ううん。平気。ごめん。」
そうだ。私は今ポアロで仕事中だった。
梓さんに声をかけられるまでパソコンの画面をぼーーーっと見たまま意識がどこかに飛んでしまっていたらしい。
「ここ2日開店から閉店までいるから疲れてるんじゃない?今日は私がやるから先に帰ってもいいよ?」
梓さんに心配され、そう言われたが私は首を振った。
「ううん。ちょっとやりたい事あるから、大丈夫。ありがとう。」
「でも…」
「昨日変な夢みたからちょっとぼーっとしてただけだよ。全然元気っ!」
むきっと肘を曲げ、元気をアピールすると、梓さんは笑ってくれた。
「最近めぐみちゃん明るくなったよね。」
「え?そうかな…?」
「彼氏でもできた?あ、もしかして安室さんかあのダンスパーティーの人!?」
「ううん、彼氏なんて…でも、大切だなって人は出来たよ。」
「えーー!素敵っ!安室さん敗れたのね…今度慰めなきゃ!」
「ははっ、安室さんは別にそんなんじゃ…」
「ねー、その人とは付き合うの?」
「ううん。気持ちも伝えてないよ。」
私がそう言うと、梓さんはちょっと言いにくそうに眉を寄せた。
「前言ってたこと…。好きがよくわからない?」
「これが好きって感情なのか確信はないけれど、すごく大事なの。しあわせになって欲しい…。私の中では今はこれで充分かな。」
梓さんは私の席の横に来て、私の両手をぎゅっと握った。
「健気っ!私はめぐみちゃんにしあわせになって貰いたいよ!」
「ありがとう、梓さん。ところで、彼氏とは幸せになれてる?」
「…そんなのとっくの昔にさよならよ。」
「え…あ。そう。」
私の手をパッと離し、ぎりぎりと握り拳を作り出した。
「聞いてくれるっ!?めぐみちゃん!」
「う、うん。もちろん。」
そこから梓さんの元カレの話が始まった。
他に女がいたやら、酒癖が悪かったやら、聞いてて酷いものだった。
うん。別れて正解だそんな男。