第40章 ごめんなさい。
売り上げ金を銀行に入金しに行ったり、在庫管理をもう一度やり直し、発注もかけた。
破れたメニューを新しいのに印刷し直して、シフトも調整していく…
休んでた代償はけっこうある。
「めぐみさん。」
「わっ!!」
真後ろで安室さんの声がして飛び跳ねた。
「すごい集中してましたね。もうお店閉めましたよ。」
「え!?もう!?梓さんは!?」
「めぐみさんが入金行ってる間に帰りましたよ。」
「…結構前!」
「マスターも買い出しの品物置いて帰りましたし。めぐみさんは忙しそうですね。何か手伝いますか?」
「いえ、大丈夫。私も落ち着いたので…」
パソコンを閉じようとマウスを動かしていると、後ろから安室さんが腕を回してきた。
「…っ。安室さんっ」
「……疲れた。」
「…。」
ポツリとつぶやかれた声には元気がない。
「この数日忙しかったんですね。怪我はしてませんか?」
何があったのか知ってるのに、白々しかっただろうか。
ぎゅっと肩に回された腕に力が入った。
「怪我は全然。」
「今なら特別…先着一名さまにココお貸しします。」
ポンっと膝を叩くと、くくっと安室さんが笑った。
パソコンを閉じ、ソファの端に座ると、安室さんがコテンと頭を預けてきた。
3回目だけどまだ緊張する。
安室さんの色々を見てきた。
バーボンとして嫌な役回りをしてるんだろう。
潜入捜査だからといって、正義感の強い安室さんからしたら人を傷つけるなんて心を痛めたに違いない。
警察としてもきっと私の想像すらできないことが色々あったはずだ。
サラサラと安室さんの髪の毛を撫でた。
「お疲れ様。安室さん。」
「めぐみも。ありがとう。」
しばらく無言の時間が過ぎた。
その間も安室さんの髪の毛で遊んだり撫でたりしていると、目を閉じたまま安室さんがポツリと一言だけ言った。
「今回…一人だけ救えなかった…」
どきりとした。
二人目の人質のことだろうか。
犯人の特長を話そうとして爆死したと聞いた。
私は二人目のその人の性別も年齢も何も知らない…。
この感じはミステリートレインの時と似てる。
話せないことが多いんだろうけど、彼はこんなにも一人で背負ってるーーー…。