第4章 裏のお仕事
「コウくん。ちょっと来て。」
コウというのは、ここのお店での名前。マスターしか呼ばないけど。
マスターに呼ばれ裏に入ると、ケータイを見つつ困った様子だった。
「安室くん、大変みたいだ。」
「え?何かあったんですか?」
「怪我は無いようだけど、車で事故したみたいで、すぐ修理に持っていかないといけないみたいで…あと警察に行ったりとか…明日の午前中のシフト代わってもらいたいって…」
「事故っ!?平気…なんでしょうか…。シフト私入りますよ。」
「じゃあ、めぐみちゃん今日このあとお客さん送ったら、もうそのまま帰っていいよ。来てもらったのにごめんね。明日ポアロお願いできる?」
「マスター一人で大丈夫ですか?」
「あと少ししたらもう一人のバイトがくるからそれまで一人で平気だよ。明日、安室くん午後から来れるそうだから、安室くん来たら帰って休んでくれていいからね。」
私はここのバーの常連さんを自宅に送る運転手のようなこともたまにしている。
免許証は偽装したものだが、提示する程度ならバレないだろう。
今日はIT企業の副社長を送る予定だ。
マスターに言われた通り副社長を、黒のクラウンの後部座席に乗せ、何度か送ったことのあるマンションへと走らせる。
私は無口で、返事はない。この車では無言。
というのが、この車内でのルール。
後ろに座る副社長は、お酒を飲んで気分がいいのか、黙って外の景色を眺めている。
毎回こんなお客さんならいいのだけれど。
もう終電もない時間。
高層マンションが並ぶ道を走らせ、副社長を降ろすと、ポアロに向かってかえる。
いつもの駐車場に停めると、ポアロの向かいの我が家へとやっと思いで帰宅した。
安室さん、事故したって聞いたけど大丈夫なのだろうか…
警察にも行くって言っていたくらいだから、事務所で起きた事件と関係あるのかな。
ウィッグをとり、堅苦しいバーテンダーの服を脱ぎ、とりあえずソファに腰掛けた。
安室さんが来てから、平穏だった私の日常が慌ただしくなったな…。
シャワーを浴びて早く寝ないと、明日は安室さんの代わりに7時には出勤しないといけないのだ。