第38章 そんなの知らない【2】
心臓がバクバクとうるさい。
どうしよう。やっぱり昨日の人質は私だと気付いているのだろうか。
「体調崩してたんですか?」
「…えっ、あ、そうなんです。風邪をひいちゃって…」
「僕が電話何度もかけたのに、出てくれないから。何か差し入れでもすればよかったですね。」
「いえ!熱だけでそこまで酷くなかったから…」
「まぁ、僕も探偵業が忙しくてここ3日ほどお休みしてたんですけどね…。めぐみさん?どうしてこちらを見てくれないんですか?」
ごくりと唾を飲み込み、私は安室さんのほうに振り向いた。
顔を見ると、いつもと変わらない優しい笑顔を浮かべていた。
「やっと見てくれた。まだ僕を避けてます?」
……あ。
昨日のことが衝撃的すぎて忘れていた。
赤井さんのことがあって、安室さんから逃げてたんだーー…。
私はふるふると首を振った。
よかった。と私の頭をくしゃりと撫でながら、安室さんは私に一歩近づいた。
「何で避けてたのか今度ちゃんと聞くからな。」
耳元でぽそりと呟くとニヤリと笑って、梓さんのいるオモテの店舗へと出て行った。
お…おまっ…急にフルヤレイを出さないでほしいっ!
知らないふりをしようとしているのに、安室さんの本当の顔を知ってしまったら意識をしてしまってどう対応していいのかわからなくなる。
赤くなった顔をパチンと叩いて、私はパソコンの前に座った。
とりあえず、足りないものを発注かけないといけない。
休んでいたから仕事は溜まってるはずだ。
ポチポチとキーを叩きながら、考えを巡らせた。
あの安室さんの感じを見る限り、昨日電話をしたのが私だとはバレていないようだった。
でも、探してるだろうなーー…。