第31章 あなた色
次の日のお昼頃までのんびりと過ごし、ホテルを出ることにした。
ラブホテルにはメイクも置いてあって驚いた。しかも新品…。
洗面台でそのお化粧を漁っていると、後ろから安室さんが来て、腰に手を回してきた。
「なぁ、あの写真の時…あのドレスの時みたいなメイクしてよ。」
「えー…」
元々黒の組織の人に顔を見られたから、変装しているのだけれど、安室さんってバーボンって人じゃなかったか?
安室さんは侵入者の私のことを知らないのだろうか?
んー、今日あと半日くらいいいか。
安室さんの前で綺麗になりたいって気持ち……少なからずある。
ギャルメイク……とまではもちろんいかないが、いつもよりは気合を入れて綺麗にした。
「ほら、やっぱり綺麗だ。初めてみれた。」
「…。」
「なんでいつもせず、あんなメガネかけてるんだ?」
「昔無茶ばっかりしたから敵も多いし、もう静かに暮らしたい…」
「誰彼構わず車蹴飛ばしてたりしたらそれは確かに敵増えそうだな。」
「昨日のはホントたまたまで!たいてい我慢してるし!」
「ふふ、冗談だよ。綺麗だ。」
指先で頬を撫でられ、ドキドキした。
綺麗と言われるとやっぱり嬉しいな…。
「さ、今日はどうしようか。とりあえずバイク返さないといけないんだろ。」
「うん、レンタル期間そろそろ迫ってるからとりあえず米花のほうに帰りましょう。」
帰る支度をして、ヘルメットを被ろうとしたら安室さんに電話がかかってきたようで私から少し離れて電話に出た。
すごくニコニコと話をしている…
「はい、はい。いいですよ。今日丁度午後から空いてましたから。」
…?
誰だろうか。
電話を切ると安室さんはヘルメットを被った。
私はちゃっかり先に運転席に座ってる。
「次は私ですよね?」
「…はいはい。安全運転頼むぞ。」
電話では丁寧な言葉遣いなのに、すぐ戻る安室さん。
その切り替えスイッチはどうなってるんだろうか。
安室さんが後に座ったのを確認して、私はエンジンをふかし、出発した。
「電話…大丈夫でした?」
「あぁ、梓さんだったよ。」
インカム越しに会話をする。
「梓さん?」
「マスターが体調崩して早退したって。午後から来れるか聞かれたよ。」