第30章 染まる
「だめ!私!」
「いや、信用できない。僕だ。」
「実績あるもん!」
「補導のだろう?今だと補導どころじゃないぞ。」
「うっ…」
「じゃあ交代で行こう。さっきめぐみだったから次は僕。いいだろう?」
砂浜での散歩を終え、バイクの元に戻ってきた私たちは次は誰が運転するかで喧嘩していた。
「安室さん運転したことあるの?」
「ん?まぁ(白バイとか)あるよ。」
「安室さん…40キロとかで走りそう。」
「そんなことないさ。スピード違反もしないが。」
「たまーにクソ真面目な学校の先生とかなんか公務員みたいになりますよね。」
「(公務員は公務員だが。)クソ真面目なメガネはお前だろう。ダッサイ格好して。まぁ、今日は少しは見れるか。」
「安室さんだって、たまにどこで買ったのかわかんない服着るくせに。まぁ、スーツはかっこいいけど。」
「「…。」」
じーっと睨みあう。
「はぁ、いいから。俺にも運転させてくれ。こんな機会ないからな。」
「…仕方ないですね。」
後ろに乗るなんてほとんどしたことないが、譲ることにした。
しぶしぶヘルメットを被って、安室さんがバイクにまたがるのを見つめた。
それを確認してから、私も安室さんの後ろに座った。
安室さんと違って腹筋背筋が弱い私は安室さんのお腹に手を回した。
「…いいな。」
インカム越しに聞こえてきた安室さんの独り言に私まで恥ずかしくなった。
「適当に走らせるぞ。」
「はーい。」
想像の何倍も安室さんの運転は快適だった。
トロいわけでもなく、曲がる時もスムーズで、安心して乗れた。
「風きもちいーねー。」
「そうだな。」
「ね、安室さん?」
「ん?」
「私ね昔ヤンチャしてたし、色々あったから今みたいにまじめに暮らししてるんだけどね。」
「あぁ。」
「別に今の暮らしが嫌ってわけじゃないんだけど、安室さんの前だと普通の私になっちゃう。ポアロの店員でもない、バーの雑用の私でもない。なんでもない普通の私。」
「……。」
「私を見つけてくれてありがとう。」
五年間ずっと隠れてた。
組織に殺させるのが怖くて、警察に捕まるのが怖くてずっとずっと、隠れてた。
「それは…こっちのセリフだ。」