第23章 バーボン
「この車はめぐみさんですか?」
「…いえ。」
「では誰のですか?僕の血でよごしてしまいました。」
「えと……」
「お詫びしたいのですよ、この車の持ち主に…。どなたか教えていただけますか?」
「言いません。ごめんなさい。」
「…なぜ?」
「この持ち主の方の許可が無いとお話しできません。」
「そんな怖い方なんですか?…まさかそのキスマークをつけた男…」
「全然違う方です。怖くもありません。別に話してもいいと言う許可さえあれば、すぐにでも教えます。」
「なら…」
「安室さんも私によく『他言無用で』と言うでしょう?今、私が話してしまったら安室さんからの信用もなくなります。私はなんでも話す人なんだと…。べつに隠したいわけじゃ無いんです。その人を裏切りたく無いだけ。」
「…わかりました。」
安室さんはそれ以上深く聞こうとはしなかった。
この車の持ち主はマスターだ。
きっとマスターのことだから、安室くんならと言いそうではあるが、夜のバーのお仕事をマスターが安室さんに話してないのであれば、わたしから言うべきでは無い。
私は指定されたホテルに向かった。
「ホテルの地下駐車場に入ってください。」
「はい。」
言われた通りホテルの駐車場に停める。
夜も遅いからスタッフや、他のお客さんもいなさそうだった。
このまま乗って待ってろと、言われ待っていると、再び安室さんが帰ってきた。
ものの数分だ。
どこに行っていたのだろう。
「ついて来てください。」
「…。」
何やら荷物が増えている。
紙袋が二つ…。
駐車場からの宿泊者専用エレベーターに向かう安室さん。
チェックインしなくてもいいのだろうか…。
自分の鞄などを持ち、私も大人しく安室さんの後について行った。
「乗れるんですか?」
これは宿泊者専用エレベーターだ。
カードキーが無いととまらないのでは?
「大丈夫、カードキーは持ってます。」
…いつのまに!
元々ここに泊まっていたのか、それとも先程電話した人から受け取ったのか…。
私もエレベーターに乗り込むと、安室さんはエレベーター内のセンサーにカードキーをかざした。
20階のランプがつき、なんだか高級そうなエレベーターが静かに動き出した。