第143章 日本を愛する貴方へ
巫女に誘導され僕と姫が庭園の真ん中へと進むと、会場が設営されていた。
と言っても、左右に椅子がいくつかと、神社の真似事か鏡などが置かれた棚があり、その前に外国人の顔をした神主がいた。
ーー彼も公国の職員なのだろう。
周りを警戒してみるが、それらしい怪しい人物や怪しい場所もなさそうだった。
むしろ警戒を和らげて、テロリスト油断させたほうがいいのではと思うほど厳重だった。
まぁ、姫を囮にするわけにはいかないか…と、チラリと左に視線を向けた。
綿帽子のせいで上からでは顔はよく見えないが、重い着物のせいで歩き方はゆっくりで緊張しているようではあった。
「…降谷さん,このまま神主による清めの祓いと祝詞を行います。そのまま2人で立っていてください。」
コソッと後ろから風見に言われ、頷いた。
ーー適当でいいものの,本当にちゃんとリハーサル通りやるのだな。姫も旦那とやりたかっただろうに。
…しかし、いい経験だ。
田舎でめぐみと2人でやってもいいかもしれない。
きっとめぐみの白無垢は美しいだろう。
流れや衣装など参考にできるかもしれないと僕は頭に叩き込んだ。
巫女などはすでに下がり、祝詞を奏上され僕は周りを警戒し続けた。
数分にわたる祝詞が終わると、目の前に杯が置かれた。
「誓杯の儀を行います。」
巫女の衣装に身を包んだ女性職員がお銚子を持って僕たちの前にきた。
ーー本格的だな。
本格的すぎやしないかーーー…。
これでは、本当の新郎に申しわけがない。
僕は眉を寄せた。
今までのことを頭で思い返した。
風見の態度、衣装、渡されない警備体制の資料。
ーーおかしい。
「巫女さんが待ってますよ。…盃を。」
「…あ、あぁ………え?」
声をかけられ、慌てて目の前の1番小さな盃を手に取り、先程の声を思い出し真横の花嫁に視線を向けた。