第15章 お酒
「『よろしければ夜会いませんか。』」
と言うメールが二日前に来ていた。
見て見ぬふりをしている。
行きたくないわけではない。
こうやって誰かと約束して一緒に夜ご飯を食べる。だなんて、ここ数年していない。
しかも男性とだなんて。
休憩時間、バックヤードのソファに座ってサンドイッチ片手にスマホの画面を睨みつけていた。
「めぐみちゃん、どうしたの。難しい…か…お…」
後ろから来た梓さんに驚き、スマホの画面を伏せたが、時すでに遅し。
目をキラキラさせて私の手を握ってきた。
「誰!?私の知ってる人!?」
「…いや、知らない人かな。」
「やだ!めぐみちゃんポアロ好きすぎてポアロから出てないのかと思ってたけど、出会ってたのねー。いいなーデート!」
「梓さんはどうなの?デート。」
「えー私ー?この前行ってきたんだけど、なーんかあんまり合わなかったのよね!やっぱりデートは数回して見なきゃダメね。めぐみちゃんも何回かデートしてから付き合うとか考えなきゃだめよ。」
「ははっ。」
サンドイッチを食べ終わりお皿を持って立ち上がった。
梓さんはまだ私の近くでウロウロしている。
「めぐみちゃん。いつの間にか私の話になってるって。」
「あ、ばれた?」
ぷぅと頬を膨らませる梓さん。
いちいち可愛い。
「ねー、どんな人なの?」
「うーん、背が高い。とりあえず背が高い。」
「いいわね。」
うんうんと頷く梓さん。
「あと…優しく顔で丁寧な話し方…ダンスが上手かな。」
「もしかして、ダンスパーティーで出会った人!?」
しまったと思ったがもう遅い。
さらに一歩梓さんは詰め寄った。
「あのキスの人!」
「だからキスしてないってば。」
「その人なの?」
「まぁ…この前街でばったり会って、なりゆきで…」
「きゃー素敵!行くんだよね?」
「うーん、せっかくだし行ってこようかな。」
「絶対行った方がいいって!」
何故か梓さんのほうが大興奮で頬を染めている。
そして、じとっと私を見つめた。
「…なに?」
「ちゃんとデート服で行かなきゃダメよ。」
「…。さ、仕事仕事。」
「ごまかし方下手ーー!」